太陽光発電の住宅への導入は、国から補助金が出ていた時期があります。しかし既に国からの補助金制度は終了し、地方自治体が独自におこなう補助金制度へと移行しています。住宅が密集している地域も多い東京都では、太陽光を十分に採り入れられるかで導入を迷っている人もいるでしょう。東京都が太陽光発電に向いた地域か、効率よく発電するためのポイントと合わせてお話します。
太陽光発電は一般家庭に普及している
“太陽光発電が本当に一般家庭に普及しているのか、疑問を持っている人もいるかもしれません。太陽光発電がどのくらい一般家庭に導入されているかについては、総務省統計局が調査結果を発表しています。平成25年住宅・土地統計調査によれば、平成15年には太陽光発電機器が設置された住宅総数が全国で28万戸だったのに対して、平成20年には52万戸に増加していることがわかります。さらに157万戸と急激な増加を見せているのは、平成25年の調査結果です。全国的な割合で見てみると、平成15年には太陽光発電を導入している住宅が全体の0.6%だったのに対して、平成20年には1.0%、平成25年には3.0%と増えています。100軒に3軒ほどが太陽光発電機器を設置しているのは、画期的です。
太陽光発電を導入している住宅は、持ち家に多いことも統計結果として出ています。平成15年には26万戸(0.9%)だったのに対して、平成20年には50万戸(1.6%)、平成25年には148万戸(4.6%)に増加。全国の太陽光発電機器導入住宅は、持ち家に多いことが明らかです。平成20年から25年にかけて急激な伸び率を見せた理由は、東日本大震災の影響があると見られています。計画停電などにより生活が不安定になった家庭は多く、特にオール電化にしていた家庭では将来的な不安を感じたようです。太陽光発電を導入することで、既存のエネルギーに頼りきらず自家発電というライフスタイルを検討し始めた人が増えています。”
東京都の年間日射量は安定している
太陽光発電機器を設置したとき、発電量を左右するのは日照時間や日射量です。気象庁などが測定している全国各地の日照時間は、地域によって偏りがあります。ただし、日照時間が長ければ、それだけで太陽光発電量が増えるとは限りません。湿度が高い地域では発電ロスが出やすくなったり、太陽光発電機器が高熱を浴びすぎて発電量が低下することもあります。そうしたことを考慮すると、東京都の年間日射量が安定している点は太陽光発電を始めるにあたってメリットにもなり得ます。全国平均並みの年間日射量が出ている東京都では、太陽光発電でも安定した発電量に期待できそうです。
実は向いていない!?東京都の太陽光発電事情
“日射量については全国平均並みの東京都ですが、日射量が少なくてもソーラーパネルの設置の仕方などを工夫して発電量を増やすこともできます。それでも太陽光発電に適していない場所はあり、東京都は全国的に見れば適していないほうの地域に属しています。理由として挙げられるのは、主に3つの問題です。1つは、東京都には面積が狭い住宅が多く、しかも住宅と住宅が密集していること。まわりに建物が少ないほど、太陽光発電には有利になります。2つめの問題は、ソーラーパネルの設置面積が小さくなりやすい傾向があることです。狭小住宅が増えている東京都では、どうしても屋根に設置できるソーラーパネルが小さくなってしまいます。太陽光を採り入れるパネル面が少なければ、発電量が低くなるのは当然です。
3つめの問題は、周囲の建物の陰になって日光を効果的に採り入れられない点です。もちろん住宅の立地条件にもよりますが、建築当初は周囲に日光を遮る建物がなくても後から高い建物が建つ可能性もあります。地域の日射量が全国平均レベルでも、住宅の条件次第で太陽光発電に向いていない場合があるということです。”
狭い屋根にもおすすめ!ルーフィット設計
“東京都のように住宅が密集している地域では、日射量を予測したうえで太陽光パネルを効果的に設置する必要があります。例えば、屋根の面積が小さい場合は、通常なら太陽光パネルを設置できる面積にも期待できません。ですが、対策としてパネルを隙間なく設置する方法もあるのです。ルーフィット設計という太陽光パネルの設置方法では、屋根のサイズに合わせた効率のよいパネルの設置ができます。大きさの異なるソーラーパネルを無駄なく配置して、屋根に隙間なくパネルを設置する方法です。ソーラーパネルの数が多ければ、発電量にもより期待できます。
ルーフィット設計では、太陽光パネルの形もいろいろ選べます。長方形や正方形だけでなく、三角形などのパネルを組み合わせることができると、屋根の隅々にまでソーラーパネルを置けます。変形タイプのパネルは価格が高くなりがちですが、性能は向上してきているため検討の価値があります。”
高い電力変換効率を追い求めるのも
“設置するソーラーパネルの枚数を増やすだけが、屋根面積の狭い東京都の住宅の太陽光発電量対策とは限りません。ソーラーパネルを増やすと当然費用がかさみますし、変形パネルを使えば使うほどコストが高くなりかねません。もう一つの対策法としては、電力変換効率の高い太陽光パネル設置があります。従来の一般的な住宅用ソーラーパネルは、電力変換効率が14~15%程度です。高いものでは19%程度のパネルもありますが、飛び抜けて電力変換効率が高い東芝の製品などにも注目してみてください。東芝では、最大モジュール変換効率が22.1%ものソーラーパネルを発売しています。このプレミアムモデルは、世界トップレベルです。
実は、東芝では2020年に変換効率20%の到達を目指していたのですが、これを早くも達成したことになります。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が掲げている「2025年までに発電効率40%」という目標を国内のメーカーが追い抜く可能性もないとはいえません。東芝のソーラーパネルが高い変換効率を備えているのには、バックコンタクト方式の採用が関係しています。パネルの表面に電極があると、太陽光が遮られてしまいます。バックコンタクト方式では、裏面に電極を設計することで効率よく発電できるようにしているのです。太陽光を有効活用できるように、反射低減コート・反射防止膜・反射膜をパネルに取り入れているのも工夫の一つ。このように技術面で工夫を凝らしているメーカーのパネルを選べば、屋根の面積が狭くても発電量をカバーできる見込みが出てきます。”
以前は国から補助金が出ていた
太陽光発電を導入する際に気になるのは、費用の問題です。国からの補助金制度は、何度か施行されています。特に2009年から2013年までは、太陽光発電が大きく注目された転換点でもあります。急速な太陽光発電の普及に伴い、システムの設置費用自体が下がったことも事実です。そうはいっても、どこの家庭でもすぐにソーラーパネルを設置しようとなるほど気軽に出せる費用ではありません。そこで頼りにしたいのが、地方自治体が提供している補助金制度です。ただし、全国どこの都道府県や市町村でも太陽光発電の設置に補助金を出しているとは限りません。地域が限定されているうえに、設置にあたって条件が付けられていることがほとんどです。まずは、居住する地域で太陽光発電の補助金制度があるかどうかを調べる必要があります。
東京都が実施している補助金制度とは
“東京都の場合はどうかというと、太陽光発電設置に関する補助金制度を導入している自治体は数多くあります。年度によっても変化がありますが、2018年度の助成制度は13区以上10市町村でおこなわれています。一つのエリアで複数の補助制度を提供していることもあり、居住する地区での補助制度は確認してみる価値があるでしょう。例えば、住宅のみならずオフィスビルや商業施設も密集しているエリアの補助制度を紹介してみます。
港区では、港区創エネルギー・省エネルギー機器等助成事業という名称の制度を提供しています。補助金額は、最大出力に応じて100,000円/kwです。上限は400,000円と決められていますが、都内の他の地域に比べると多めの割合で補助されることになります。太陽光発電システムの要件は、未使用で最大出力はパワーコンディショナーの定格出力が10kw未満であることが一つです。機器の設置後に、自ら電力会社と需給契約を結べることも要件の一つ。さらに、一般財団法人電気安全環境研究所(JET)か国際電気標準会議(IEC)のIECEE-PV-FCS制度に加盟している海外認証機関で太陽電池モジュール認証を受けた機器を使用していることも重要です。実施期間は2018年4月2日~2019年3月20日で、交付申請受付は2019年2月28日までとされています。
港区とはまた違った住宅環境を持つエリアについても見てみましょう。江東区では、江東区地球温暖化防止設備導入助成事業という名称の補助金制度を実施しています。対象は、区内に住宅を所有する個人あるいは区内分譲マンションの管理組合です。補助金額は、太陽電池モジュールの最大出力合計値が1kWにつき50,000円で上限は200,000円。集合住宅の場合は、上限が1,500,000円とされています。公募期間は、2018年4月2日~2019年3月29日。交付申請受付は、2019年3月8日までです。
世田谷区で実施されている世田谷区環境配慮型住宅リノベーション推進事業補助金制度は、2018年4月1日~2019年2月28日までを公募期間としています。補助金の予算が限度額に達したら終了になりますが、他の地区とは異なる制度内容ですから申し込んでみる価値があるでしょう。補助金の支給額は、対象工事における経費から消費税を除いた10%(上限200,000円)です。世田谷区の耐震改修工事の助成と合わせて太陽光発電を導入する場合は、経費から消費税を除いた20%(上限400,000円)が補助されます。世田谷区内に本店、または支店等を置く施工業者と契約して施工することも要件の一つです。”
家庭用蓄電池の補助金も
“太陽光発電では、蓄電池を設置することでより効率のよい電力使用ができます。売電にも便利な蓄電池に対して、補助金が支給される制度も検討してみるとよいでしょう。東京都では、2018年12月現在で家庭用蓄電池に補助金を支給する制度があります。補助される金額は、蓄電池価格の6分の1です。1戸あたりの上限金額には、2つのパターンのうちいずれか少額なほうが選ばれます。1つは1kWhにつき40,000円、もう1つは1kWhにつき240,000円です。
この制度の対象は、東京都内に新規設置された未使用品、かつ住宅の住居用に使用されている蓄電池システムです。公募期間は、一般申請が2016年6月27日~2020年3月31日。事前申請期間は、2019年10月1日~2020年3月31日です。”
東京都が蓄電池の補助金を出す理由とは?
“国が太陽光発電導入の補助金制度を廃止し、地方自治体によっても補助金制度を実施しているところと実施していないところがある中、なぜ東京都は導入補助金のみならず蓄電池システムの補助金制度までおこなっているのでしょうか。その目的は、2つ考えられます。1つは、各家庭でのエネルギー消費量の削減です。全国的に東京都の家庭がエネルギー消費量のトップランクにいることは、経済産業省資源エネルギー庁が発表している統計データからもわかります。例えば、東京都の家庭に対して、東京都に隣接している埼玉県ですら電力消費量が半分程度なのです。人口が多い東京都では、家庭での電力消費量総計が高くなっています。
もう1つの目的は、災害が発生したときの非常用電源の確保です。エネルギーが枯渇するリスクは、現時点では高くはありません。しかし、日本のエネルギー自給率は他国に比べると低く、エネルギーの確保は国際情勢に左右されがちです。自国でエネルギーをまかなえる必要がありますし、各家庭で全エネルギーを電力会社に依存するのにも不安があります。すでに、災害時の停電などで電気が供給されない状況に困った体験をしたことがある人も少なくないでしょう。太陽光発電を導入すれば、自家発電による電力供給がかないます。補助金制度を利用すれば、初期費用を抑えつつ将来的にも大きな節約が見込めるメリットがあるのです。”
まとめ
東京都で太陽光発電の導入をする場合は、慎重な検討が必要です。といっても、悲観的に考える必要はありません。日照時間や日照量で不利な場合でも、屋根の面積が小さくてソーラーパネルを十分に設置できなくても、それらの問題に影響されにくい発電機器を選べばよいのです。効率よく発電できる製品やメーカー選びには、悩むかもしれません。そのようなアドバイスを的確にしてくれる設置業者に相談できれば、無駄に悩むこともなくなるでしょう。地域ごとの補助金制度についても詳しい業者であれば、お得になおかつ将来的に明るい太陽光発電の導入ができるはずです。
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