太陽光発電を設置することを検討した場合、まず気になるのが税金の問題です。そもそも太陽光発電には、固定資産税はかかるのか。かかるとすれば、どのくらいかかるのかなど、はじめて導入する場合には、分からないこともあるでしょう。ここでは、固定資産税の基本から、太陽光発電で固定資産税がかかるケース、かからないケースについて解説していきます。太陽光発電を検討している方の参考になると幸いです。
そもそも固定資産税って何?
“固定資産税というのは、固定資産の所有者に対して課税される地方税のことをいいます。固定資産というのは、土地や家屋、償却資産のことです。固定資産税は毎年1月1日を基準として、課税されます。毎年1月1日時点の固定資産の所有者に、固定資産の課税標準額をもとにして課税されるのです。
課税標準額は、固定資産税課税台帳に記載された額です。納税通知書は固定資産税課税台帳登録者に対し、送付されるため、対象者は、各市町村ごとに条例で定められている納期までに納付します。
太陽光発電設備は固定資産のうち、償却資産にあたります。そのため、課税対象になった場合には、太陽光発電の所有者は、償却資産申請が必要になるのです。
償却資産にかかる税金は、償却資産税と呼ばれています。製造や小売業、農業など事業を行っている個人や事業主、あるいは会社に対してかかる税金です。償却資産は、事業用の資産である構築物や機械・装置、船舶や航空機、車両や運搬具、器具や工具、備品などのことをいいます。いいかえれば、経年で価値が目減りしていく資産のことです。
太陽光発電の装置は、償却資産のうち、機械・装置としての扱いになります。太陽光発電設備が課税対象になる場合には、償却資産税がかかるのです。”
太陽光発電は固定資産税の課税対象?
“太陽光発電を行うときには、必ずしも固定資産税がかかるわけではありません。設備の規模や使用目的によって、固定資産税が非課税になるケースもあります。また、太陽光発電設備は、その設備の形態により、償却資産として課税対象になる場合と、家屋として課税対象になる場合があるのです。
太陽光発電の設備は、出力が10kW未満の住宅用と10kW以上の産業用に分けられます。この場合、10kW未満の住宅用設備であれば、営利目的ではなく、個人での使用が目的の資産とみなされるため、基本的には非課税です。
この10kWという電力は、40~50枚の太陽光パネルを設置したときの電力が目安になります。太陽光パネルは1枚あたり約200~250Wの出力です。このことから、家庭用の屋根にこれだけのパネルを設置できるケースは稀でしょう。ほとんどの一般住宅では、10kW未満の電力であるといえます。
一方、産業用設備の場合には、出力レベルによらず、課税対象になります。たとえば、店舗兼住宅としてお店を営んでいたり、個人所有の賃貸住宅で、太陽光発電の設備を設置した場合には、産業用の扱いです。このとき、売電方法によらず事業用の資産としてみなされるため、全量売電、余剰売電など、いずれの場合であっても、課税対象になります。かりに、賃貸住宅にて住人がすべての電力を利用していたとしても、不動産賃貸事業の一部という認識になるのです。
また、住宅用設備であっても、出力が10kW以上の設備の場合には、産業用とみなされ、課税対象になります。”
設置形態で課税か非課税かは変わる
“太陽光発電は、設備の設置形態によって、課税になるのか非課税になるのかが変わります。
太陽光発電の設備が、屋根から取り外し可能の架台方式をとっている場合には、非課税になる可能性が高いです。このことから、後づけのタイプは非課税になる可能性があがるでしょう。
一方で、屋根と一体型になっている太陽光発電の場合には、太陽パネルや架台などの設備が家屋としてみなされ、固定資産税の課税対象となります。また、太陽光発電設備一体型の新築住宅を購入する場合なども、課税対象になるでしょう。
特に、太陽光発電住宅やソーラー住宅などとして売り出している場合、もともと家の美観やデザインなども考慮されて売られているため、家屋としての価値が高いと評価される場合が多いです。こうしたことから、一般的な住宅よりも固定資産税が高くなる場合があります。”
太陽光発電で受けられる税制上の優遇措置
“太陽光発電の固定資産税に関しては、「再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置」という優遇措置があります。課税標準の特例措置は、エネルギーの安全保障の強化や低炭素社会の創出などのために、平成24年度から国が実施している制度です。平成28年度に改正されました。
現在実施されている制度では、平成28年4月1日~平成30年3月31年までに取得した太陽光発電設備が対象です。また、取得済みの設備のうち、一般財団法人環境共創イニシアチブによる「再生可能エネルギー事業者事業費補助金」を受けていることが条件になっています。10kW以上の太陽光発電かつ、自家消費を目的とした設備が対象です。小規模な発電設備を複数組み合わせて導入する場合であっても、10kW以上の出力であれば、補助対象となっています。
該当している太陽光発電設備は、固定資産税の減額措置を受けられます。具体的には、課税標準額が3分の2に減税されるのです。
固定資産に関する課税標準の特例申請書と一般財団法人 環境共創イニシアチブの発行する「再生可能エネルギー事業者支援事業補助金交付決定通知書」の写しを、設備の設置されている市町村へ提出することで制度の適用を受けられます。
ただし、平成30年3月31日までに導入された設備が対象のため、今後設備を導入する場合には、残念ながら対象になりません。”
土地や建物にかかる固定資産税への影響は?
“太陽光発電のシステムを設置したとしても、土地や建物にかかる固定資産税に変化はありません。
また、太陽光発電のシステムを更地に設置した場合、賃貸経営とは異なり、小規模宅地特例の特例を受けることはできません。小規模宅地特例というのは、人が住んでいる建物の場合に、最大で6分の1までの固定資産税が安くなる特例のことです。太陽光発電の設備にしたとしても、この特例は受けられません。更地の有効活用の方法として、野立て太陽光発電を検討している場合には、留意しておきたいところです。”
太陽光発電にかかる固定資産税の計算方法
“固定資産税は評定額×税率1.4%で求めることができます。たとえば、太陽光発電設備を500万円で購入した場合には、500万円に1.4%(0.014)をかけて単純計算をすれば、固定資産税は、約7万円かかる計算です。ただ、太陽光発電の場合には、償却資産税になるため、実際の計算はもう少し複雑になります。
導入した初年度は、0.064の減価償却率から評定額を求めます。5,000,000円×(1-0.064)=4,680,000円が評定額です。ここへ、税率1.4%がかかります。4,680,000円×0.014=65,520円が固定資産税(償却資産税)です。さらに、特例措置が適用された場合には、3年間、3分の2になるため、43,680円になります。
2年目以降は、減価率が0.127になります。前年の評定額(4,680,000円)に減価率0.127をかけると2年目以降の償却資産税を計算できるでしょう。また、太陽光発電設備の耐用年数は17年のため、課税対象になった場合には、この税金を17年間払い続けることになります。
とはいえ、償却資産税は年々減少していき、増えることはありません。17年目になるまでには、買いかえるケースは多いですが、もしも17年目以降も使い続ける場合には、17年目の固定資産税が18年目、19年目にもかかります。”
固定資産税の申告方法は?
“固定資産税は自治体の税務事務所に申告します。設備を取得した次の年度の1月末までに申告しておきましょう。
市区町村の税務事務所などから届く償却資産報告書に記入し、毎年1月末までに提出します。2年目以降は、一緒に届く種類別明細書(減少資産用)に、前年度から減少した償却資産がある場合には、記入して提出します。
固定資産税は、年間4回(6月、9月、12月、2月)に分けての分割納付です。”
固定資産税がかからないようにするためには?
“固定資産にかかる課税額は、調査によって決定します。とはいえ、固定資産税がかかるパターンはおおよそ決まっているため、そのパターンを避けることで、固定資産税がかからないようにはできるでしょう。太陽光発電設備の設置で、固定資産税がかからないようにするためには、大きくわけて3つのポイントがあります。
まず、太陽発電設備を10kW未満の設置容量にしましょう。住宅用太陽光発電で10kW以上のものは稀ですが、産業用太陽光発電で小規模のものでも10kw以上のものは、全量売電扱いになります。この場合には、事業目的として売電収入が見込めることから、固定資産税がかかるのです。逆に10kW未満のものは、せいぜい、使用して残った分のみの余剰売電しかできないため、事業用資産とはなりません。そのため、課税対象外となります。
また、売電収入が20万円未満である場合にも、固定資産税がかかりません。会社員などの給与所得がある一般家庭の場合には、売電による売電益は雑所得として計上されます。この雑所得は、収入から必要経費を引いた所得の金額です。太陽光発電設備における必要経費とは、導入費用のことをいいます。
この導入費用は、設備の導入1年目だけではなく、法定耐用年数の間ずっと、経費として認められるのです。太陽光発電システムの法定耐用年数は17年のため、その期間中は必要経費として収入から差し引くことができます。
この雑所得が、年間20万円未満の場合には、所得の申告が必要ありません。20万円以上になる場合には、所得の申告が必要になりますし、太陽光発電からの売電収益が見込まれると、結果として固定資産税もかかってしまいます。
さらに、固定資産税をかからないようにするためには、設備の形態も家屋一体型のものではなく、後づけ式のものにするのもポイントです。そもそも、家屋を保有している場合には、固定資産税がかかります。さらに、家と一体型になっているものに対しても、固定資産税がかかりやすいのです。
たとえば、家を新築する際に、屋根と一体型になっている太陽パネルを設置すると、固定資産税の対象と判断されるケースがあります。屋根の素材として太陽パネルを設置した、という場合にも固定資産税がかかりやすいのです。固定資産税をかからないようにするのであれば、取り外しのできるもの、後づけのものを選ぶとよいでしょう。”
評価額150万円を切れば課税対象外となる
“事業を運営していない個人が、償却資産として太陽光発電の設備を手にいれた場合には、課税標準額の合計が150万円を切れば、非課税となります。たとえば、初期投資費用で設備に300万円かかった場合には、6年目から評価額が150万円以下です。その場合には、固定資産税の納税義務がなくなります。
もしも、固定資産税の納税を5年で終わらせてしまいたい、と思うのであれば、初期費用を316万円以内におさめましょう。これが317万円になってしまうと、購入額の差はたった1万円ですが、6年目も2万円程度の固定資産税が発生してしまいます。1万円の費用の違いだけで実際の出費は3倍にもなるのです。よって、値切ることを考えるのであれば、境界線は316万円になるでしょう。
ちなみに、この計算は、減免特例措置を受けられた場合の計算です。減免特例率をかけた計算になっているため、減免特例措置の対象になっていない場合には少し計算がことなります。
このように、初期費用をおさえることで固定資産税が少しお得になるのです。施工内容が十分であることは前提ですが、同じ施工内容であれば、安価な施工会社を選びましょう。その際には、しかるべきところにコストを割いて、不要なところはコストカットしている施工会社を選ぶのがコツです。特に、地元の施工会社と提携している会社であれば、アフターフォローもしっかりしているため、安心して依頼できるでしょう。たとえば、安価で良質の施工をする会社にヒラソルという会社があります。愛知県に本社を置きながら、無駄な営業費用や事務所設備をコストカット。安価なサービスを実現しています。
どの施工会社を選んでも、製品は大手メーカーの商品で変わりはありません。もちろん、しっかりとした施工技術のある会社を選ぶことは必要ですが、固定資産税のことも加味すると、できるだけ安く購入するのがおすすめです。”
まとめ
“太陽光発電のシステムを導入するなら、まず事前に計画している設備が固定資産税の対象にならないかどうかを、チェックしておきましょう。
出力レベルや売電収入、設備の形態、評定金額などによって固定資産税がかかるかどうかが変わってきます。まずは、施工会社に相談をしてみて、予算から見積もりを出してもらうのもよいかもしれません。”
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