太陽光発電は、きちんとした業者に依頼すれば設置後のトラブルが少ないシステムです。ところが、ときにはトラブルが起こって生活に支障をきたすこともあります。ブレーカーが落ちるなどのトラブルは、代表格でしょう。ここでは、太陽光発電にまつわるトラブルや対策法に加えて、トラブルの原因となりやすい分電盤について解説していきます。
電気が使えるまでを知る!分電盤の仕組みとは
“太陽光発電の設置工事では、ソーラーパネルの設置が最も重要と考えている人も少なくありません。しかし、ソーラーパネルの設置と同じくらい大事なのが電気工事です。特に、発電した電力を分配・調節してくれる分電盤は、軽視できません。ブレーカーとも呼ばれる分電盤は、太陽光発電に限らず電力会社から電気を供給してもらっている場合にも住宅内に設置されています。住宅だけでなく、ビルや工場など電気を使う場所ならどこにでもある分電盤は、トラブルが起こると停電などで混乱を招きかねません。
太陽光発電で作られた電気や電力会社から供給された電気は、配電盤で受け取られます。そこから電圧を変えた電気が送られるのが、分電盤です。家庭内なら、回路を分けて各フロアや部屋に電気が分けられていきます。電気を分ける以外にも、電気の使い過ぎや漏電による事故防止などの電気チェックをするのが分電盤の役目です。実は、余った電力を電線に逆流することができるのも分電盤の機能の一つ。つまり、売電できるのは分電盤のおかげなのです。”
電気の安全を守る!分電盤の中身について
“分電盤には、金属やプラスチックで出来た箱の中に3つの役割を持った機器が設置されています。まず、送られてきた電気を開閉する役割を果たしているのがメインブレーカーです。これは配線用の遮断機で、過度に負荷がかかるとショートしてしまいます。電気を使い過ぎると急に停電になるのは、このブレーカーが過電流を教えてくれているということです。もう一つのブレーカーである分岐ブレーカーは、アンペアブレーカーとも呼ばれています。一定以上の電気が流れると、自動的に電気が切れるようになっているブレーカーです。契約アンペアの大きさによって色分けされており、部屋やフロアごとに配電するときは分岐ブレーカーが活躍します。多くの分岐ブレーカーには20A(アンペア)の過電流遮断機あるいは漏電遮断機が設置されており、125%の使用で1時間以内に遮断される仕組みです。
漏電遮断器は、配線用遮断器に漏電が生じたときに自動的に遮断してくれるシステムです。漏電とは、分岐ブレーカーの電流和が規定値を超えることを意味しています。これにより、火災や感電事故を防止可能です。”
配電盤とは何が違う?
“分電盤によく似た言葉に、配電盤があります。言葉の響きが似ているだけでなく、役割も似ている部分があるため、勘違いしてしまうことがあるかもしれません。念のため、分電盤と配電盤の違いを理解しておきましょう。配電盤は、ビルや工場のような大きな施設に設備されています。配電盤に電力会社から送電されてくるのは、高圧の電流です。そんな高圧の電気を施設内の各設備で使えるように、適度な電圧に変換する役割を配電盤は持っています。さらに、回線を通して各場所に設置された分電盤に分配するのも配電盤の役目です。
配電盤には、キュービクル式と開放型の2つの種類があります。必要な機器がおさめられた閉鎖型のキュービクル式は、安全性が高く主流になってきています。工場で組み立てを済ませてから据え付けができるうえに、製品の信頼性が高いのもメリットです。これまで主流だった開放型は機器を鉄製のフレームに取り付ける必要があり、設置に手間がかかるのが難点でした。配電盤は、より大きな電力を受け止めて分配する機器、配電盤から電気が分配されるのが分電盤と考えると違いがわかりやすいでしょう。”
太陽光発電の分電盤には電力買い取りのための大きな役割が
“太陽光発電設備で設置される屋内分電盤には、発電した電気の変圧をして必要な場所に分配する以外にも重要な役割があります。それは、逆潮流というシステムです。太陽光発電では、電気を使うだけでなく作った電気を電力会社に売ることもできます。たくさん発電して電気が余ったり、節電して使わなかった電気を電力会社に売れれば儲けになります。作った電気を売るには、電線を通して電気を電力会社へと送らなければなりません。これが、逆潮流です。この機能が分電盤に付いていなければ、せっかく発電しても電気を売ることはできません。
逆潮流に対して、電力会社から電力を購入するときの流れを順潮流といいます。電気には、高い電圧から低い電圧へと流れる性質があり、潮流になぞらえた言葉が使われているのです。普段何気なく使っている電力会社の電気は、電気の引き込み口にかかっている電圧を供給電圧より低くすると受け入れることができます。これが順潮流で、電気を電力会社に送りたいときには電圧を電力会社の流す電圧より高くしなければなりません。このようなコントロールも、分電盤が自動的におこなってくれます。”
太陽光発電は電気工事が重要!
“ソーラーパネルの設置にばかり気をとられがちな太陽光発電の工事ですが、電気工事にも手抜きは許されません。電気工事が成功していてこそ、電気を安全・便利に使えるようになり、電力会社に余剰電力を売れるようにもなります。ソーラーパネルの設置と同じように、電気工事にも様々な準備が必要で正しい手順をとることが大切です。大まかな流れを紹介すると、準備としてパワーコンディショナーや接続箱などの設置場所を打ち合わせたり、工事中の停電の説明や養生マットを敷くなどがあります。工事に入ったら、ソーラーパネルからのケーブルをまとめる接続箱を設置し、パワーコンディショナーの位置決めと設置、電力計ボックスの設置、太陽光ブレーカーの設置などを進めていきます。検出ユニットやCTセンサー、モニターの設置なども済んだら点検をして工事終了です。
ソーラーパネルからのケーブルをまとめる接続箱は屋外に設置するため、湿気や水が浸入しないように注意する必要があります。防水処理も、工事の一環です。発電した電流を宅内で使えるように変換するパワーコンディショナーは、故障を防ぐために分電盤など近くに物がない場所を選びます。熱がこもりやすく、それが故障や劣化にもつながる原因となるため、慎重な位置決めが肝心です。分電盤の隣に設置されることが多い太陽光ブレーカーは、太陽光発電システムの容量に合わせることが大切です。高圧な電流から太陽光発電システムを保護する役目を持っています。他にも、分電盤の近くには検出ユニットが設置されるため、スペースに余裕をもっておかなければなりません。”
太陽光発電の電気トラブル1.夏場のブレーカー落ち
“太陽光発電で電気トラブルが起こるとしたら、よくあるのが夏場のブレーカー落ちです。屋外にパワーコンディショナーや太陽光ブレーカーを設置していると、夏場に高温になったときに機器の温度が上昇して稼働停止する恐れがあります。太陽光発電のシステムが止まってしまうと、漏電ではないかと心配にもなるでしょう。しかし、パワーコンディショナーの温度上昇による稼働停止は一種の誤作動です。発電や電力の使用が止まってしまうだけで、安全面では問題ありません。温度が下がれば、再び起動するため安心してください。とはいえ、さっきまで発電していた電力を使用できなくなるのは不便ですし勿体ない話です。パワーコンディショナーなどの機器を設置する場所は、高温になり過ぎない場所を選ぶことをおすすめします。
どうしても屋外に機器を取り付けなければならない場合は、直射日光が当たりにくい場所にしたり、急激な温度上昇を避けられる場所にすることが大切です。風通しがよい場所を選べば、温度が一時的に上昇してもすぐに下がりやすいでしょう。設置する向きなども、事情に詳しい業者に相談しながら選んでください。温度上昇を防げない場所になる場合は、冷却ファンを取り付けるなどの方法もあります。”
太陽光発電の電気トラブル2.湿気もトラブルの原因に
“高温と同じくらい気を付けなければならないのは、湿気です。湿度が高くなってくると、漏電の恐れが出てきます。高温多湿ともなれば、リスクが2倍になることを認識しておきましょう。梅雨などの雨が多い時期だけでなく、冬場に多い結露が起きたときも漏電のリスクがあります。日本はもともと湿度の高い国ですから、湿度計を置いてこまめにチェックしておくなどの対策をおすすめします。漏電までいかなくても、湿気や天候の影響でブレーカーが落ちることもあるため注意が必要です。
滅多に起こることではないと油断しがちですが、雨漏りも漏電の原因になりやすい問題です。ポタポタと天井から水滴が落ちてくるほどになったら致命的ですが、雨漏りはじんわりと天井や壁にシミが出来始めて気付くこともよくあります。日常的に家の中に目をやって、雨漏りしていないかなどのチェックをしておくことが太陽光発電の効率にもつながります。ただし、システムの誤作動によってブレーカーが落ちてしまうことも珍しくありません。設定ミスのない業者に設置を依頼することも大切です。”
太陽光発電の電気トラブル3.電力の過剰使用
“太陽光発電に限らず、電力会社から電気を供給されている場合でもブレーカーが落ちることがあります。原因は、主に電力の過剰使用です。つまり電気の使い過ぎということですが、契約している容量の範囲内であればいくら使っても問題はありません。一度に使う電気量が契約容量を超えてしまうと、ブレーカーが落ちるようになっているのです。太陽光発電のブレーカーも同じく、電力の容量が決まっています。例えば、電子レンジとドライヤーを同時に使用するとブレーカーが落ちやすいなど、アンペア数の高い電化製品を使うときには要注意です。比較的アンペア数の高い家電としては、電子レンジやドライヤーの他にIHクッキングヒーターや電気ストーブなども挙げられます。
容量以内におさまるような電気の使い方をしているはずなのによくブレーカーが落ちるという場合は、機器の設定が間違っている可能性があります。メインブレーカーと分岐ブレーカーの設定をするとき、メインブレーカーの容量をより大きく設定することも基本です。容量を上げようとして分岐ブレーカーのほうだけ大きく設定し、メインブレーカーは少ない容量に設定したのでは問題があります。業者の設定ミスかもしれませんので、このような間違いのない業者選びをするのが安心です。”
ブレーカーが落ちないための対策とは
“太陽光発電のブレーカーは、正しい設定と使い方をしていればそうそう簡単には落ちません。ブレーカーが落ちるのには必ず原因がありますから、何が原因かを探って適切な対策をとりましょう。まず、温度や湿度に対するメンテナンスをおこなうことが大切です。これをおこなうだけでも、ブレーカーが落ちなくなる可能性はあります。ブレーカーの負荷端子部分は、一番熱を持つ部分です。そこに直接風があたるように吸気ファンを取り付ければ、効果的な熱対策となるでしょう。冷却ファンを使うときには、ファンが古くなって回転数が落ちていないかにも注意する必要があります。
漏電のリスクを防ぐためには、定期的な計測がモノをいいます。太陽光発電の設置業者のメンテナンスとは別に、こまめに自発的なチェックをおこなうようにしてみてください。日常的に様子を見ていると、小さな変化にも気付けるようになります。トラブルが大きくなると原因を究明しにくくなることもありますが、小さな変化のうちに気付けば原因を突き止めやすいでしょう。といっても、ときには二次側に問題があることもあります。システムのどこかで漏電していたり、漏電していなくてもブレーカーが落ちることがあるのです。パワーコンディショナーとモジュールのアースを一緒に取っている場合など、漏電の原因としてよく挙がってきます。太陽光発電の導入時点で、漏電対策の相談は入念におこなっておくと安心です。もちろん、トラブルに詳しく適切な対処に強い業者への相談をおすすめします。”
まとめ
太陽光発電を導入して電気が使えるようになるまでには、分電盤の役割がいかに肝心か参考になったでしょうか。太陽光発電でも、容量以上の電気を同時に使ったことでブレーカーが落ちたり、温度や湿度などの影響で漏電するようなリスクがあります。電気が使えなくなるのも不便ですが、漏電から火災などの事故に発展してしまったのでは元も子もありません。トラブルの原因やリスクの可能性を把握して適切な対策をとることで、安全で便利な太陽光発電ライフを満喫してください。
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