国内には優秀な太陽光発電事業を行う企業があり、ホンダソルテック株式会社もその1つでした。2006年に設立に至り高度なサービスを提供しつづけていましたが、残念ながら2014年には撤退を余儀なくされています。ここではホンダソルテックにはどんな特徴があるのか、そして撤退した理由についてやアフターサービスの有無について解説します。
株式会社ホンダソルテックとは?
ホンダソルテックは、世界的な大手自動車メーカー・本田技研工業株式会社の100%子会社です。「エネルギー創造」をモットーに掲げて2006年に設立して、太陽光発電業界へと参入しました。化合物系のCIGS太陽電池の独自開発に成功し、2007年10月に量産を開始します。一般的には太陽光電池の原材料にシリコンが用いられていましたが、このCIGSはシリコン不使用であったため環境に優しいエコなシステムとして注目を浴びます。また太陽光発電業界への参入は遅れたものの、本田技研工業の100%出資という支援があったため利用者の安心感が得られ、大きくシェアを伸ばしました。
ホンダソルテックの太陽電池の魅力とは?
“太陽光発電事業者の大半が導入している太陽光電池はシリコンが用いられたシリコン系のものですが、ホンダソルテックの場合は化合物を用いた薄膜系のものです。ホンダソルテックの太陽光電池には銅(Cu)をはじめインジウム(In)やガリウム(Ga)、セレン(Se)といった化合物が使用されており、それぞれの元素記号の頭文字を取ってCIGSと呼ばれています。CIGSはシリコン系に比べて材料が調達しやすくより少ない原料で製造することができ、地球資源を有効活用できるため環境に優しいとされているのです。
化合物半導体を発電層に用いているCIGSには、パネルの一部分が影に覆われていたとしても大きな発電効率の低下を起こさないというメリットがあります。周囲に家屋や木がない立地であればともかく、市街地ではたとえ屋根であっても太陽光パネルを遮るものは非常に多いです。しかしCIGSは発電素子の構造上、大きな電圧低下を引き起こさないという性質を持つため発電性能が安定します。これにより太陽光発電を行う上で不利な環境であっても効果的に発電できるため、影が懸念材料となっていた立地でも可能性が広まったのです。
CIGSは用いられる材料の影響により、黒色へと仕上がります。そのためダークな色合いが多い日本の屋根と馴染みが良く、ソーラーシステムを装着していてもより自然な印象になるといった点も魅力の1つです。太陽電池以外のパーツや設備のカラーリングも黒色にすることで、一層屋根への統一感・親和性が向上します。また用いられる素子の素材の特徴として光沢感が少なくマットな仕上がりであり、他社で製造されている黒色のパネルと比較しても落ち着いた印象となる点も高い評価の一因でしょう。
1枚あたりの電圧が280Vと高電圧であるため、全並列接続が可能な点も魅力の1つです。そのため電圧を調整する上で欠かせない昇圧器が不要となり、より自由な配置が可能となります。これによって従来は困難であったスペースへの設置も実現し、住宅用太陽光発電システムの可能性を大きく広げることとなりました。”
太陽光発電事業を撤退した理由
“当時太陽光発電業界において唯一CIGSを採用しているホンダソルテックは、2014年の4月をもって事業を終了しています。製造過程において使用エネルギーが少なく、太陽光への反応の幅広さが売りであったCIGSで業界で渡り合えたものの、ライバル企業の多くの太陽電池に採用しているシリコンの価格が下落したことによって事態は急変しました。これにより各企業の材料費の大幅カットが実現したため、それに伴いシリコン結晶系太陽電池パネルの価格も値下げが行われます。
その後もホンダソルテックは品質の維持やサービス向上を図って健闘しましたが、化合物系を取り扱う事業の継続は困難であると判断し撤退を表明しました。受注生産自体は、同年2月中旬をもって終了しています。ただあくまで価格競争の激化や事業計画達成が困難になったことが原因であり、製品そのもののクオリティや性能が他社製品よりも劣っていたという訳ではありません。さまざまな種類の太陽光から発電が可能であったこと、1枚あたりの発電効率が高いため全並列接続ができることから非常に優秀な製品であったことが分かります。影ができたり屋根の面積が足りなくて、諦めざるを得なかった家庭にとっては強い味方でした。”
ホンダソルテックのアフターサービスは?
“株式会社ホンダソルテックは2014年2月中旬に受注を終了し、同年4月に事業を終了して解散という形を取っています。ただ撤退前に購入して発電システムを使用し続けている利用者のために、販売終了と同時に引き継ぎがなされておりアフターサービスもこれまで通り継続して行っているので安心してください。アフターサービスを継続して行っているのは、設立時の出資者であった本田技研工業株式会社の関係会社・ホンダ開発株式会社です。
ホンダソルテック製品のアフターサービスを受けるには、窓口であるホンダ開発株式会社の公式ホームページへとアクセスします。利用方法は公式ページにあるお問い合わせフォームに、問い合わせ内容と氏名や連絡先など必要事項を入力するだけです。問い合わせフォームを送信したあと、担当者より連絡があるため着信可能な電話番号やメールアドレスを入力しましょう。またホンダソルテックの太陽電池には10年間の出力保証が、パワーコンディショナーなど周辺機器に至っても10年間の無償保証が付与されていることも特筆すべきポイントです。”
【他のおすすめ主要メーカー1】シャープ
“国内はもちろんのこと世界中にその名を轟かせる電機メーカーのシャープも、太陽光パネルを取り扱う事業者の1つです。洗濯機や液晶テレビなど家電製品だけでなく、太陽光発電業界においても数々の実績を誇ります。シャープが太陽電池の開発に着手し始めたのは1959年のことで、本格的に関わり出した頃から数えても50年程前から取り扱っている、業界内における老舗メーカーです。1994年には住宅用のシステム「SUNVISTA(サンビスタ)」の販売を開始し、全国展開を果たして国内においての最大シェアを誇るほどにまで登り詰めました。
かつては太陽光発電システムの価格の下落によってシャープが苦戦した時期もありましたが、他社のパネルのOEM販売を実施することにより盛り返しています。現在は世界的にも約2割程のシェアを占めるほど強大に成長したシャープは、自社製品の改良に努め代表機種である「ブラックソーラー」を生み出すことに成功しました。ブラックソーラーの特徴として発電した電気の変換効率が高い点、積雪の多い地域にも対応している点が挙げられます。電極がブラックソーラーの裏側に配置されているため、表面に電極がない分より多くの太陽光が受けられるからです。
ブラックソーラーの電極が裏側に配置されている恩恵は、見栄えの向上にも一役買っています。デザインの面で有利な上に形状の自由度も高くなるため、さまざまな屋根の形やスペースに対応できるのも強みです。そのためシャープのパネルの種類は豊富で、設置や運用の選択肢が広がる点も大きな特徴と言えるでしょう。”
【他のおすすめ主要メーカー2】京セラ
“スマートフォンから医療器具、アクセサリーなどその取り扱う分野は幅広い京セラも有力な太陽光発電メーカーの1つです。京都に本社を構える京セラ株式会社は、世界をまたにかけるグローバル企業でありながらも国産品にこだわり高い品質を維持していることでも知られています。多数の国内メーカーがセルの製造を海外企業に依頼して経費削減を図る中、セルの原料の製造からモジュールの組み立てまでを国内で行うという強いこだわりを持っている企業です。太陽光発電事業に加えて、省エネ関連事業も盛んに行っている点も特筆すべきポイントでしょう。
国産にこだわる京セラの太陽光発電システムの特徴として、長寿命と高い耐久性が挙げられます。凍結・結露が著しい冬場や高温多湿の夏場など、日本の屋外で太陽光システムを運用するには強い耐候性・耐久性が必要です。業界において太陽光発電システムの長期間の稼動実績が少ない中で、26年間北海道で稼動するシステムを作った京セラの技術力は非常に優れたものと言えます。また2012年にドイツ国際研究機関によって行われた「耐PID試験」で、京セラの製品は出力低下が起きなかったため世界的な評価へと繋がりました。
京セラは住宅用の太陽光発電システムを数多くリリースしていますが、オーソドックスな「エコノルーツ」や変換効率が高い「ルーフレックス」シリーズが代表機種として挙げられます。いずれの製品もパネルに低反射ガラスが用いられており、無駄な反射を抑え発電ロスを極力カットしている優れものです。さらには京セラの太陽光パネルは多彩なデザインを持ち、長方形以外のパネルも組み合わせることによって複雑な形状の屋根にもマッチします。”
【他のおすすめ主要メーカー3】パナソニック
“創業から100年を超える老舗の電機メーカー・パナソニックは、家庭向けの家電製品から企業に向けたエネルギー事業まで幅広く展開している企業です。太陽光発電システムはこの内のエネルギー事業に分類されており、太陽光発電を含む再生エネルギーを有効活用するプロジェクト「スマートタウン」も推し進めています。これまでパナソニックは自社工場での生産でより高い品質をキープしてきましたが、海外へと展開を広めるにあたり生産コストを下げるべく製造拠点をアメリカやマレーシアなどに移行して、より活発な価格競争へと参入しているのが現在の主な動向です。
パナソニックの代表的な機種は、「HIT(ヒット)」シリーズです。高出力かつ高温特性を持つHITは、アモルファスシリコンで結晶シリコンを挟み込んだ3層構造からなるハイブリッド型太陽光パネルに分類されます。従来の結晶シリコンの欠点としてパネルの温度上昇に伴う性能低下が挙げられますが、夏場などの高い気温下において発電量が高まるアモルファスシリコンと組み合わせることにより、見事にこの弱点を克服しました。これにより一年中の発電量の安定化が図れるほか、低反射ガラスを採用することで太陽光を無駄なく採光することができ発電量の増加も成功しています。”
【他のおすすめ主要メーカー4】三菱電機
“1974年から太陽光発電の開発に携わり続けてきた三菱電機は、太陽光発電業界においてシャープに次ぐ老舗メーカーです。日本で初めて住宅用太陽光発電システムが販売されたのは1993年のことですが、三菱電機は1996年に販売を開始しています。三菱電機はモジュールやパワーコンディショナーなど、太陽光発電にまつわる全てのパーツを国内で生産している企業です。そのためパワーコンディショナーの変換効率が高く、停電時の電気使用量が多い上に耐久性も高いといった特徴を持っています。
「生涯発電力」をコンセプトに、耐久性の高いパネル開発を進めてきた三菱電機の代表的な機種は「マルチルーフ」シリーズです。パネルの発電効率は決して高いとは言い切れないものの、三菱電機の掲げるコンセプトを忠実に守り抜き優れた耐久性を誇ります。またパワーコンディショナーの変換効率は高く、太陽光から得た電気を直流から交流へと変換する性能は業界でもトップクラスです。他のメーカーの変換効率の平均値が95.5%前後であるのに対し、三菱電機は98%前後と大きくリードしています。
マルチルーフシリーズは6種類のパネルが展開されており、その形状のバリエーションは台形やスリムサイズなど実に豊富です。他社にはない柔軟なデザイン形状により、複雑な形の屋根であっても効率的な配置が可能となります。そのためパネルの発電効率がやや低くても、パネルの設置面積でカバーできるという訳です。安定して長期運用が可能なパネル構造を組み込むことにより、コンセプトである生涯発電力の実現に向けて邁進しています。”
【他のおすすめ主要メーカー5】東芝
“東芝は生活家電や通信機器といった電機製品をはじめ、放送やエネルギー事業など幅広い分野にわたって展開している企業です。長く太陽光エネルギー事業に取り組んでいましたが、住宅用の太陽光発電業界には2010年に参入しました。産業用太陽光発電の普及数は全国2700ヶ所以上、住宅用システムに関しては10万戸以上にのぼるといった高い実績を収めています。大手電力会社の発電所に導入されるほどの高い品質と安全性、コストパフォーマンスや手厚い保証制度が大きな特徴です。
東芝の代表的な機種として高い発電効率を誇る「Sシリーズ(プレミアムモデル・エクセレントモデル)」、高出力モデルの「GXシリーズ(エコノミーモデル)」が挙げられます。Sシリーズの発電効率が高い理由は、太陽光の当たる面積を最大にするバックコンタクト方式のモジュールを採用しているからです。この高い変換効率の恩恵として軽量化およびサイズダウンに成功し、住宅用に適する上に外観を損ねることのないモデルとなっています。GXシリーズには280Wもの高出力な単結晶セルが搭載されており、間隔を短くすることによってより高い出力が得られているのです。”
まとめ
影に強くて高い変換効率を持つ優れた太陽光パネル・CIGSを独自に開発したホンダソルテックですが、シリコンの価格低下に伴う価格競争の激化に苦戦し、2014年に太陽光発電事業からは撤退しています。既に製品の生産・販売は終了しているものの、アフターサービスはホンダ開発株式会社に引き継がれているため、終了前に導入された方は引き続き利用可能です。これから太陽光発電システムを導入する方は、他の太陽光発電メーカーを検討しましょう。
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