太陽光発電システムの導入を検討する場合の重要事項の一つに、epc業務をどうするかという問題があります。しかし、そもそもepc業務が何かを知らないという人も少なくないはずです。そして、それを知らないまま太陽光発電システムの導入をしてしまうと、思わぬ損を被ることにもなりかねません。そこで、epc業務とはどのようなもので、どういった特徴があるのかについて解説をしていきます。
epcってどういう意味?
“「e・p・c」の3文字はEngineering・Procurement・Constructionの略であり、それぞれ設計・調達・建設という意味があります。そして、この3つの工程を別々の業者が個別に行うのではなく、一元管理された状態で遂行される事業のことをepc業務といいます。epc業務は主に石油やケミカルの分野などで力を発揮しています。たとえば、石油の分野においては国内だけでなく、海外の石油精製プラント建設などにも日本のepc業務が提供されているといった具合です。また、ケミカルの分野では合成繊維、合成ゴム、合成樹脂などにおいて基本設計、詳細設計、調達、建設、メンテナンスなどを一貫して行うepc業務が取り入れられているのです。
一方で、太陽光発電事業の中にもepc業務は存在します。同じように、設計・資機材調達・工事などの工程を一括して請け負うわけですが、再生可能エネルギーへの移行が真剣に検討されるようになって以降、より高い注目を集めるようになっています。”
太陽光発電業者のepc業務の内容
“epc業務を行う業者はまず、顧客のコンセプトをもとにしてシステム導入の計画を立案します。また、採算性などの観点からその実現性を評価するのも重要な仕事です。計画が決まれば基本設計を確定し、プロセス設計・機器構成・配置などをまとめてコスト算定をしていきます。続いて、詳細設計に移り、必要設備の設計や操作性・運用性・保守性の要件を決定していきます。以上がepc業務のEngineering(設計)にあたる部分です。
次に、Procurement(調達)です。顧客の提示した予算や納期に基づき、性能やコストパフォーマンスに優れたモジュールや各種機器類を選定・調達する作業に入ります。場合によっては海外から最適な機器を探して買い付けることになります。本来であれば、取り付け架台やパワーコンディショナー、接続箱、集電箱、ケーブルやモニタリングシステムなどといったものは個々の業者が用意するところですが、epc業務の場合はそれを一括で調達して管理できるというわけです。
最後のConstruction(建設)は実際に太陽光発電を設置する作業を行うことであり、その際には下請け業者に対してシステムの施工管理サポートをしていきます。さらに、それ以外にも、必要に応じて設置をする場所の物件調査なども行います。以上のように、計画立案から設置対応までの一連の作業を通しで行えるのがepc業務の特徴です。”
epc業務で施工を任せるメリットは?
“仮に、従来の方法で太陽光発電を導入しようとすれば、設計・注文・施工といったものを別々の業者に依頼しなければならないことになります。そうなると、業者同士の連携が取れていないため、どうしても無駄が生じてしまいます。一方、epc業務で施工をまかせると、一社に依頼するだけで太陽光発電システムの購入・施工・管理などを行ってくれるのです。一括管理の元で作業が進行するため、無駄がなくなります。その結果、設計の最適化、高品質化、短納期化が期待できる点が最大のメリットだといえるでしょう。施工のミスや資材の高騰による費用の増大といったリスクも少なくなりますし、契約なども元請け業者一社と行えばよいだけなので、手続きの手間も大幅に軽減されることになります。
それに加えて、アフターフォローの問題も見逃せません。複数の業者が各工程をそれぞれ独自に行った場合、もし不具合が起きてもどの業者が対処してくれるのかが分からないといったことになりがちです。その点、epc業務であれば、請負業者が全ての工程を一括管理しているため、施行後のメンテナンスや定期点検などのアフターサービスを行ってもらうことができます。また、太陽光発電の導入の際にはいろいろ不安を感じてしまうものですが、すべての工程を管理している請負業者ならばどんなことでも気楽に相談することができます。これもepc業務の大きなメリットだといえるでしょう。”
太陽光発電システムのepc契約って何?
“建設に関わる契約の一つにepc契約と呼ばれるものがあります。この契約を結ぶと、結んだ業者が建設工事の元請けとなり、下請け業者の手配と工事の監督を行うことになります。そもそも、なぜこのような契約が存在するのかというと、epcの各業務は専門性が高く、それらを一社でまとめて請け負うことが困難だからです。かといって、各分野の仕事を個別に引き受け、バラバラに仕事をしていたのでは効率が悪すぎます。連携が取れていないために、工程の途中で不具合がでてしまうおそれもあります。
そこで、epc契約という仕組みを作り、元請けがすべての工程を一元化して管理できるようにしたわけです。これにより、効率良く計画を立て、スムーズに作業を進行することが可能となります。以上のように、epc契約を行うことは顧客側にとってだけでなく、業者側にとってもメリットの大きな仕組みだといえます。”
epc業者に施行を任せる際の注意点
“epc業務は多くのメリットがあるという意味では確かに魅力的です。しかし、注意すべき点もいくつか存在します。たとえば、業者によっては作業の進捗が見えにくいという点が挙げられます。仮に、epc契約ではなく、従来の分離型で仕事を依頼すると、各業者から作業の進捗について報告があるはずです。煩雑ではあるものの、各業者が何をしているのかは分かりやすくなります。それに対して、epc業務の場合、epc業者に管理・監督を一括してお願いしている形になっているので、その業者からの報告があまりないと作業の進捗がどうなっているのかがわかりにくくなってきます。もちろん、こちらから質問をして確認をすることは可能ですが、最初からすべてを任せているため、そもそも何を確認すればよいのかも分からないといったことにもなりかねません。
また、費用に関しても同様です。お金はepc業者に一括して払っているので、費用の内訳が分かりづらいという問題が起きてしまいます。個別に業者と契約すると個々の費用が明らかになるために、高いと思う業者があればその業者だけ別の業者と入れ替えることも可能です。一方、epc業者に仕事を依頼すると個々の業者の費用は把握しづらくなります。それに、たとえ把握できたとしても、「あの業者は費用が高いから入れ替えてほしい」などというわけにはなかなかいきません。このように、epc業者に依頼すると費用に関する選択肢が狭められてしまうという点はあらかじめ理解しておいた方がよいでしょう。
さらに、それに関連してコストがかさみやすいという問題もあります。一見、一つの業者が一括管理するepcの方が作業に無駄がなくなってコストダウンにつながるように思うかもしれません。確かに、そういった面もあるのですが、問題は請負業者が必ずしもコスト優先で下請け業者を選んでいるとはかぎらないという点です。そうであれば、自分で費用の安い業者を一つ一つ選んだ方が総費用は安くなるでしょう。あるいは、工事に伴う申請手続きなどは自分で出来るといった場合は、全てを請負業者にまかせるepcよりも分離発注をして工事だけを業者に依頼した方がコストダウンを図れるということになります。”
まとめ
epc業務には効率がよくてアフターフォローも安心などといったメリットがある一方で、進捗状況が見えにくくなるおそれがあり、コストがかさみやすいなどの注意点も存在します。したがって、まずはその内容がどういうものかをきちんと把握することが大切です。その上で、太陽光発電システムの購入や施工をepc業者に任せるか、分離発注にするかについてよく検討をしていきましょう。
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